いのちをつむぐ会より県への意見書(テンプレ用)
我々いのちをつむぐ会では、農政環境部環境管理局へ「新温泉風力発電に対する県へのお願い」をメールさせていただきました。
PDFはこちらをご覧ください。
(表示はグーグルドライブ形式ですが、印刷はA4サイズでちゃんとできます)
https://docs.google.com/document/d/e/2PACX-1vQaEWY5R4d5nwNVzi6b1UwjUG2XmFxA6c10g-tqPpkYplnmJ4hzmYKojz-kWMacotQ0AKz22gwK-FO-/pub
以下はその本文です。
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農政環境部環境管理局
水大気課環境影響評価室 担当者 様
兵庫県知事室 室長 様
いのちをつむぐ会 代表 山地弘純
(高野山真言宗 善住寺 住職)
(仮称)新温泉風力発電事業に対する県へのお願い
先日県政への「さわやか提案箱」にメールさせていただきましたところ、兵庫県知事室長の日下部雅之様よりご丁寧な返信をいただきましたこと、お礼申し上げます。その返信の中に、詳細は「農政環境部環境管理局水大気課環境影響評価室審査情報班」にお問い合わせくださいと記されておりましたので、ご連絡させていただきました。
私はいのちをつむぐ会の代表をさせていただいている山地と申します。今回の風力発電計画地の真っただ中にある善住寺というお寺の住職をさせていただきています。
県知事の井戸敏三様と環境影響評価室長の上西琴子様には先日にお手紙も書かせていただきました。この村を取り囲むような大規模な風力発電計画は、生態系にはもちろん、健康面、災害面に甚大なリスクがあり、集落の存立を脅かすため、断固として許すわけにはいかないという旨の意見を述べさせていただきました。その際には、反対意見を述べさせていただいたのみで、懸案事項の詳細は記しませんでした。今回の書簡では、その点について記したいと思います。
知事の意見書が間もなく事業者に出されるとお聞きしました。現状の環境影響評価の配慮書や方法書では、依然として大きなリスクが残る可能性が高く、環境面だけでなく、事業の性質そのものにも、大きな不安を抱いております。地元、新温泉町の議会においても、建設を懸念する要望書が提出されたことは既にご存知かと思います。加えて、以下のことを、地元住民からの声として耳を傾けていただければ幸いです。
1. 地域への丁寧な説明が決定的に不足
今回の計画に対して、集落への説明は一切なく、環境アセスメントの報告書や計画の概要すら知らされていません。さらに、資料を請求しても入手できない状況にあります。このような情報公開のレベルで大規模な開発行為の手続きが進められていることは大きな問題です。改善するよう事業者に指導してください。あらゆる関連文書は、秘匿することなく、期間を限定することなく、地域住民に開示し、複写可能とすることを希望します。
2. 健康被害のリスクを限りなく減らすこと
国内外の資料を拝見すると、風車からの距離が2km以内では多くの係争が生じているほか、健康被害の報告が多数みられます。また、騒音や低周波に起因すると思われる「QOL(生活の質)」の低下が約3~5km圏内でも生じている事例が複数あることから、学校や病院、福祉施設は当然のことながら、居住地や寺社などの名勝地が5km圏内に含まれないように計画することを強く求めます。この条件が満たせない場合は事業を中止すること。ここは譲れません。
仮に、上記の条件を満たして運転する場合であっても、事後調査においては、新温泉町の全世帯を対象とした「QOL」に関する調査を実施して、健康被害や生活の質への影響を定量的に把握してください。
3. 自然環境への最大限の配慮
優れた自然環境の保全は、郷土の文化や生活、安全を守るための礎となります。周辺には史跡名勝も多く、緑に囲まれた人工物が少ない景観は、地域の魅力であり、貴重な観光の資源です。山林の樹木は、水資源の保全や、土砂災害と洪水を防ぐための大切な役割を担っています。無計画な自然環境の破壊は、地域の生活を台無しにする可能性があります。
このため、保安林や自然公園、防災面での指定斜面や渓流周辺では、一切の伐採を行わないように計画し、その他の区域において森林の伐採が生じる場合には、地域コミュニティーとの協議と同意を得て実施すると同時に、失われた森林の回復を求めます。特に、搬入道路を新たに設置することが余儀なくされますが、これは相当量の延長になると予想されます。また、発生する残土や廃棄場所の問題もあります。しかし、方法書にその状況や対策が一切示されていません。これは、明らかに事業者による環境影響評価法の手続き上の不手際です。兵庫県知事の見解として、不備を明確に指摘して頂き、資料等の再提出を求めてください。仮に、この不手際を見過ごしたことが原因で事故が生じた場合は、事業者だけでなく、指導責任を有する経済産業省の過失になる可能性があります。
計画が予定されている地域には、数多くの希少な野生動物が生息しており、特に「熊谷」の地名にもある熊(ツキノワグマ)やイヌワシ、クマタカ、オオタカ等の猛禽類の生息する場を現状維持して下さい。諸外国では、特にコウモリ類や小鳥にも大きな影響があることが知られていますので、可能な限り多くの生物を対象として、事前と事後で調査方法を統一して個体数を定量的に比較できるように調査を実施してください。
生態系への影響は、工事が完了しなければ実際の影響を把握するのが困難です。特に、影響は数年ではなく、5~10年かけて顕在化することが科学的にも良く知られています。このため、事後調査は10年以上継続し、希少種だけでなく、普通種の減少が顕在化した時点で、有識者や地域の方々、行政担当者を交えて協議し、すみやかに運転を中止することを含めた協議体制の確保を求めます。中止の基準については、のちの準備書ならびに評価書において具体的な数字として記載し、有識者のチェックを受けてルールを作成ください。
4. 事業の継続性と事故時の対応に関する不安
事業の実施主体は、外資系の資本金10万円、専属の従業員ゼロのペーパーカンパニーです。実態のない企業であり、施工能力や業務監督、緊急対応の能力を保証するものが何もありません。これまでも、全国各地で風車での事故、健康や生活被害、二次災害、設備の放置などが生じています。被害を被るのはいつも地域住民です。仮に、事故や人為的災害、施設の放棄、事業者の倒産が生じた場合について、危機管理体制、保証体制、保険や担保等などの具体的な書類と対応計画書を、事業者から兵庫県ならびに新温泉町に提出することを求めます(出資企業の同意書も添えて)。この対応については、公的資金による補助事業を監督する経済産業省等にも指導責任があることをお伝えいただき、準備書段階において不測の事態への対応を検討して頂くようお願いします。
また、自然災害による被害についても、風雨、土砂崩れ、地震、落雷等の項目ごとに整理し、事前に想定した計画書と復旧計画を作成ください。風車の設置場所だけでなく、搬入路の開削によって、当然ながら災害リスクが著しく向上します。工事に起因した災害への対応についても準備書段階で計画を示して頂くよう指導ください。
代表である私個人としても檀家様よりお寺という歴史ある大きな建造物と、たくさんのお墓を霊園にお預かりしている立場ですので、寺の静寂が失わること、環境悪化や災害事故が生じた場合の対応について危惧しております。
5. 関連する法規制の許認可について
すでに、配慮書の段階において、自然環境への影響が懸念される旨が、経済産業省ならびに環境省、兵庫県の意見として記されています。生物多様性条約の「愛知目標」では、目標3のなかで、「生物多様性に有害な補助金を含む奨励措置の廃止」が掲げられています。次の「準備書」段階で生態系への影響が深刻との見解があった場合、公的資金による補助は国際条約の趣旨に反します。この場合、経済産業省および環境省は、事業者に対して公的資金による補助事業の採択を控えていただくよう提言してください。また、保安林の解除や森林法その他条例に基づく伐採についても、準備書の段階で影響が深刻との見解があった場合には、法令の趣旨に反しますので、伐採等の開発行為を許諾しないでください。事業者に対しては、開発の許諾を必要としない区域を利活用し、計画を再検討して事業を遂行するよう指導してください。
6. 新温泉町への地元貢献
今回の風力発電施設の設置意義について、配慮書や方法書では、事業効果や地域社会への貢献について全く触れらていません。仮に、風力発電によって膨大な電力を取得できるならば、どのように送電され、この発電による寄与が新温泉町や近隣自治体、兵庫県全体のエネルギー利用に、どれほどの貢献があるのか、また実質的なCO2削減の効果を示してください。
風力発電は、自然条件によって出力が大きく変化し、予測とコントロールが難しいエネルギー源です。風車での発電量が単純にCO2の削減量を示すものではありません。経済産業省の資料によれば、風力を電力源として運用するには、バックアップとなる火力等の電力供給が不可欠であり、系統接続による制約なども考慮する必要があります。こうした地域の現状と将来的な見通しや、電力系統解析に基づいた新温泉町への貢献を示していただければと思います。新温泉町をはじめ周辺地域での脱炭素化が進むのであれば、前向きに検討する材料になります。
新温泉町では、将来の町の発展にむけて、町民や行政が一体となって実施する「新温泉町地方創生総合戦略」を定めています。このプランのなかでは、安心・安全の生活環境や医療機関の充実、出産・子育て環境の充実、海、山、温泉などの地域資源を生かした観光産業の振興などが掲げられています。しかし、今回の風力発電施設の設置は、こうした町の取り組みを阻害する負の側面が目立ち、新温泉町の存立にも深刻な影響を及ぼしかねません。生活環境や地域資源の劣化によって、未来の新温泉町を担う若者のUターンが阻まれるとすれば、取り返しのつかない損失となります。 大規模な風力発電施設の設置による地域社会への影響について総合的な観点から再考ください。
以上、取り急ぎ知事意見書が出る前にお伝えしたかった内容となります。お目通しいただきたくお願い申し上げます。
合掌
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