まずは風力発電について知ること (基本の知識として)

 今、日本全国を風車が埋め尽くすべく、多くの巨大風力発電事業が申請され、着工へ向かっています。

 直感的に嫌だという思いを感じたとしても、その声をあげることにはなかなかに勇気のいることと思います。


 まずは風力発電がいったいどういうものなのか。

どういう背景でこのような風力発電ブームになっているのか。

それを知ることから始めてみませんか。


 ここには押さえておきたい「キーワード」を書き出してみました。

どうぞご覧ください。



サンシャイン計画

 オイルショックを契機に「サンシャイン計画」が国家プロジェクトとして始まったところまで、日本の再エネの歴史はさかのぼれるようです。

 この一大プロジェクトが進められた背景には、前年の1973年に起きた、第一次オイルショックがありました。エネルギーを中東の石油に依存していた日本では大きな混乱が起き、安定的なエネルギーが求められるようになったのです。 
 そこで、石油だけに頼らないエネルギーの長期的な安定供給の確保を目指す「サンシャイン計画」が、当時の通商産業省(現・経済産業省)主導のもと、産官学の力を結集して進められました。枯渇しないクリーンなエネルギーの活用技術を開発するという目標を掲げたもので、主な対象となったのは、太陽光発電、地熱発電、水素エネルギー、石炭の液化・ガス化です。
 また、風力発電やバイオマスエネルギーの研究なども、「総合研究」として進められました。(資源エネルギー庁HPより引用)

 1993年からは「ムーンライト計画」と統合した「ニューサンシャイン計画」が行われ、環境保全、経済成長、エネルギー需給安定対策のための新エネルギー、省エネルギー技術、環境対策技術推進が計画されるも2000年に終了しています。

 結果は、これまた計画倒れに終わった。だから、原発事故後、今さらのように再生可能エネルギーの促進が叫ばれているのだ。(「財務省が隠す650兆円の国民資産」高橋洋一より引用)


京都議定書

 1997年12月11日。地球温暖化防止のための目標が定められた「京都議定書」が採択されました。

 1997年に京都で開催された、国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3:The Third Conference of Parties to the UN on Climate Change)において採択された、温室効果ガスの排出量削減目標および国際制度を取り決めた国際協定書をいう。
 先進国全体で,2008~2012年までに温室効果ガス6種類(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄)の排出量を、1990年レベルの平均5.2% を削減する法的拘束力のある数値目標(日本6%,アメリカ7%,ヨーロッパ8%)を科し、目標を達成するための仕組みを導入しようとするものである。
 京都議定書が発効するには,1990年における二酸化炭素排出量の少なくとも55% を占める先進国を含む、55か国以上の国が批准することが必要で、日本やヨーロッパの主要国は署名済みであるが、2000年に開催された会議が決裂し、その後、2001年にアメリカが離脱を表明し、交渉は難航している。
一方,わが国では,京都議定書の実施に向けて内閣に地球温暖化対策推進本部が設置されている。 (化学辞典第2版より引用)

 これにより温室効果ガスを多く排出する化石燃料を削減し、排出量が少ない燃料の選択が重要とされました。

 このような背景からまず重要視されたのが原子力発電所の導入促進です。

 エネルギー供給の観点から最も二酸化炭素排出削減に貢献している原子力は、将来においても効果的にかつ大幅に二酸化炭素排出を削減できるエネルギー源として重要である。(原子力白書より引用)
 地球温暖化問題が注目される中で、原子力発電の重要性が大きく見直されており、今後、我が国における地球温暖化対策の中心的な役割を果たすと考えられています。発電方式別の二酸化炭素(CO2)発生量の比較を見ても原子力発電は太陽光発電や風力発電と同様、ほとんどCO2を排出しない地球環境に優しい大変優れた電源であると言えます。(三菱重工HPより引用)

 このように原子力発電は地球温暖化への救世主のような触れ込みで増設されていきました。

 産官学という「産業界、国や地方自治体、大学や研究機関」の連携により、その推進は加速します。

 もちろんその連携にはモラルに則っている限りは大いなる意義があるのですが、「原子力村」と揶揄されるような産官学の癒着がそれを歪めてしまいます。

 政治家への多額の献金や大学機関への多額の寄付、そして天下り。地方の有力者へのばら撒き。

「そんなの陰謀論じゃないか」と信じたい国民の気持ちを裏切るように、高浜原発の金品受領などの問題が公になってきています。

 この世界で起きていることは、自分の心の内側で起きていることです。

国民一人一人が、表向きでは「美徳」を第一のように語りながら、本音では「マネー」が第一であるという自己の心と向き合う必要がありそうです。

 


 また、原発を受け入れる地元へも莫大なお金が落とされています。この交付金は国民が支払う電気代にかかっている「電源開発促進税」が財源とされていることも知っておく必要があるでしょう。

 一般電気事業者(→電力産業)の販売電気を課税物件とする国税。目的税であり,税収の使途は原子力発電,水力発電,地熱発電の施設などの設置や利用の促進,安全の確保などとなっている。一般電気事業者に対して課税され,税率はその販売電気 1000kWhにつき 375円(2016現在)。石油危機を背景とした電力事情から原子力発電所などの早急な設置が求められ,1974年,その建設を推進するため,電源開発促進税法が制定された。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より引用)

 こうして2010年3月の時点で原子力発電所は54基が稼働し、電源構成は30%を超えてきていました。

 問題点としては、莫大な原発マネーによる利権でズブズブに癒着した原発村がつくり出す「安全神話」が、現実を覆い隠していたことと言えるのではないでしょうか。

 それが崩れたのが2011年でした。




東日本大震災原発事故

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震による津波の影響により、東京電力の福島第一原子力発電所で、炉心溶融(メルトダウン)など一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故が発生しました。

 この福島第一原発事故も含めての「東日本大震災」です。

 2011年(平成23年)3月11日の東北地方太平洋沖地震発生当時、福島第一原子力発電所では1〜3号機が運転中で、4号機〜6号機は定期検査中だった。1〜3号機の各原子炉は地震で自動停止。地震による停電で外部電源を失ったが、非常用ディーゼル発電機が起動した。
 ところが地震の約50分後、遡上高14 m - 15 m(コンピュータ解析では、高さ13.1 m) の津波が発電所を襲い、地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機が海水に浸かって機能喪失。さらに電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリーなど多数の設備が損傷するか、または流出で失うかしたため、全電源喪失(ステーション・ブラックアウト)に陥った。このため、ポンプを稼働できなくなり、原子炉内部や使用済み核燃料プールへの注水が不可能となったことで、核燃料の冷却ができなくなった。核燃料は運転停止後も膨大な崩壊熱を発するため、注水し続けなければ原子炉内が空焚きとなり、核燃料が自らの熱で溶け出す。
 実際、1・2・3号機ともに、核燃料収納被覆管の溶融によって核燃料ペレットが原子炉圧力容器(圧力容器)の底に落ちる炉心溶融(メルトダウン)が起き、溶融した燃料集合体の高熱で、圧力容器の底に穴が開いたか、または制御棒挿入部の穴およびシールが溶解損傷して隙間ができたことで、溶融燃料の一部が圧力容器の外側にある原子炉格納容器(格納容器)に漏れ出した(メルトスルー)。
 また、燃料の高熱そのものや、格納容器内の水蒸気や水素などによる圧力の急上昇などが原因となり、一部の原子炉では格納容器の一部が損傷に至ったとみられ、うち1号機は圧力容器の配管部が損傷したとみられている。 また、1〜3号機ともメルトダウンの影響で、水素が大量発生し、原子炉建屋、タービン建屋各内部に水素ガスが充満。1・3・4号機はガス爆発を起こして原子炉建屋、タービン建屋および周辺施設が大破した(4号機は定期検査中だったが、3号機から給電停止と共に開放状態であった、非常用ガス処理系配管を通じて充満した可能性が高い)。
 格納容器内の圧力を下げるために行われた排気操作(ベント)や、水素爆発、格納容器の破損、配管の繋ぎ目からの蒸気漏れ、冷却水漏れなどにより、大気中や土壌、海洋、地下水へ大量の放射性物質が放出された。複数の原子炉(1,2,3号機)が連鎖的に炉心溶融、複数の原子炉建屋(1,3,4号機)のオペレーションフロアで水素爆発が発生し、大量に放射性物質を放出するという、史上例を見ない大規模な原発事故となった。(wikipediaより引用)

 福島原発から20km県内を「警戒区域」、20km以遠の放射線量の高い地域を「計画的避難区域」として避難対象地域に指定し、10万人以上の住民が避難したとされています。

 これにより原子力発電所の安全神話は崩壊し、社会的信頼を失いました。

 こうして全ての原発は停止され、原発輸出計画の見込みも失われ、原子力推進派は勢いを失うこととなります。




FIT制度(改正FIT法)

 震災の次の年に始まったのがFIT制度です。これにより、原子力発電に代わる電源として期待される再生可能エネルギーの導入が加速するきっかけとなりました。

 FITとはフィードインタリフの略であり、再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」の事を言います、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電力会社が買い取ることを義務付ける制度です。再エネ特措法(FIT法)という法律に基づき、2012年7月1日にスタートしました。

 しかし太陽光発電に偏りがあったことや、FITを受けたのに発電を始めないという未稼働案件の増加、地域トラブルなどの課題が浮き彫りになり、2017年4月にFIT法を改正。事業実施の確実性の高い案件を認定する仕組みとしました。

 事業者には、適切なメンテナンスの実施等も求めています。さらに、認定を受けて一定期間が過ぎても発電を始めない事業者には買取期間(調達期間)を短縮するなどのルールも設けています。

 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
 電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えていきます。
 この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進みます。(資源エネルギー庁HPより引用)

 

  毎年法律によってエネルギーの受け渡し価格(タリフ)が変わります。

しかし事業者にとっては発電開始時から20年間タリフは変更せず、買取が保証されています。

(以下の表は「太陽光発電メリットデメリット」のHPから引用)

 このFIT制度が開始され、多くの事業者が再エネ発電に乗り出し、FIT制度の創設以降、水力を除く再エネは2.6%(2011年度)から8.1%(2017年度)と3倍以上に増加しました。

 原発の再稼働が進まない現状ではCO2排出を抑えるには再エネの大幅な拡大が必要だという主張がだんだんと国民に浸透していっています。

 再生可能エネルギーの目標をもっと高く――。経済団体や自治体などから、再エネ政策の強化を求める声が相次いでいる。政府は真剣に耳を傾け、太陽光や風力による発電を伸ばす政策づくりを急がねばならない。(朝日デジタル2020.8.31より引用)
 経済同友会は29日、2030年の国内電源構成を巡り、再生可能エネルギーの比率を40%にすべきだとする提言をまとめた。現状は17%にとどまり、政府のエネルギー基本計画でも30年で22~24%としている。同友会はほぼ倍となる目標を掲げることで、政府の支援、民間投資に弾みをつける必要があるとした。(日本経済新聞2020.7.29より引用)

  このように、現在は再エネが正当な口実をもったビジネスチャンスとして捉えられています。

 表向きの言葉は「温暖化防止のためには何かを犠牲にしなければならない」といいつつ、本音は「資本主義経済のためには何かを犠牲にしなければならない」という経済成長の呪いが、田舎の隅々にまで覆いつくそうとしています。


 そう、「原子力村」から「再エネ村」になっただけで問題の質はなんら変わっていません。

 産官学一体となって向かってくるのです。

 そこに公正性が保たれない癒着の実態は、信じたくないですが、やはり根が深いものではないかと思います。


◎佐世保市宇久島のメガソーラーパーク事業で贈賄事件で現職の佐世保市議を逮捕

◎愛知県常滑市に誘致した太陽光発電施設を巡る市議会議員の汚職事件


 なにかがおかしいままに進んでいく事業計画。

 残念ながら、それは国や御用学者のお墨付きをもらった大手企業に、地域を搾取されるような構図となっているということです。

 こういう構図の事業は、決して推進してはいけません。





再エネ賦課金

 毎月の電気料金の明細を見ると「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と書かれています。

 多くの方は知らないかもしれませんが、FIT制度による高い再エネ電気の買い取り費用は実は国民一人一人が電気代の中で支払っているのです。

 固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によってまかなわれます。再生可能エネルギーで発電された電気は、日々使う電気の一部として供給されているため、再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせていただいています。(資源エネルギー庁HPより引用)

 そうなると、風力発電に反対していたとしても、風力発電の電気を高額で買い取り、再エネが普及していくことに協力していることになります。

 「電源開発促進税」も払い、「再エネ賦課金」も払い、原発や再エネの財源を知らないところで国民皆で賄っています。

 再エネ賦課金は、電気の使用量に比例して増加するため、世帯人数が多くなるほど負担は大きくなる傾向にありますし、多量の電気を使う会社などは高額になるはずです。

 またドイツではこのような「貧富の格差拡大」の問題もあるようです。富裕層は再エネ導入し売電収益を得て、しかも使用電気代が少ないなら賦課金も少なくてすみます。結局電気代はそれ以外の人が賄い、そのしわ寄せは低所得者に直撃するというのです。

 再生エネルギー再割当負担金は、ますます多くのお金が低所得層から富裕層に動くことを意味します。例えば、ルール地方の貧しい借家人は、屋根に太陽光パネルを設置したバイエルンの裕福な持家世帯を助成するために、高い光熱費を支払うことになるのです。「ドイツのエネルギーヴェンデ(大転換)の失敗から学ぶ教訓--日本にこそ示してほしい地球温暖化問題を解決する方法」




エネルギーミックス

 2018年7月3日に「第5次エネルギー基本計画」が発表され、日本のエネルギー政策の方向性が示されました。

 日本全体に供給する電気を、さまざまな発電方法をミックスしてまかなう「エネルギーミックス」の実現を目指すということです。2030年には石炭石油で29%、LNG(天然ガス)27%、原子力20~22%、再エネ22~24%と4つの発電方法がバランスよく分散することを目標としています。

 エネルギーミックスを含むエネルギー政策は安全性を大前提とし、安定供給、経済性、環境の「S+3E」を満たすことを基本としています。

Safety (安全)、Energy security (安定供給)、  Economical efficiency( 経済性)  Environment( 環境)   (資源エネルギー庁PDFより引用)

 再エネに関しては、「経済的に自立し「脱炭素化」した主力電源化をめざす。」とされています。

 高額な固定価格買取にささえられていきた再エネは、現時点では自立していない電源なのです。

 また、Environment( 環境)  という点で、多くの問題を生み出し始めていることも事実です。

 いずれにせよ、この目標に向かって今後はごり押ししてきますので、再エネも原発も注意が必要です。S+3Eの原則が守れないものは、決して推進してはならないのです。




風力発電事業計画策定ガイドライン

 2017年3月に策定された風力発電事業実施の参考にするべきガイドラインです。

以下、詳細はPDFをご覧ください。

【第1節企画立案】
2、 地域との関係構築
① 事業計画作成の初期段階から地域住民と適切なコミュニケーションを図るととも に、地域住民に十分配慮して事業を実施するように努めること。 
② 地域住民とのコミュニケーションを図るに当たり、配慮すべき地域住民の範囲や、 説明会の開催や戸別訪問など具体的なコミュニケーションの方法について、自治体 と相談するように努めること。環境アセスメント手続の必要がない規模の発電設備 の設置計画についても自治体と相談の上、事業の概要や環境・景観への影響等につ いて、地域住民への説明会を開催するなど、事業について理解を得られるように努 めること。
【解説】
 風力発電設備の設置に当たっては、関係法令及び条例を遵守し適切に土地開発等を実 施した場合においても、事前周知なしの開発行為の実施や地域住民とのコミュニケーシ ョン不足等により、地域住民との関係が悪化することがある。地域住民の理解が得られず、 反対運動を受けて計画の修正・撤回を余儀なくされる事態も存在する。
 これらを未然に防ぎ、風力発電設備が地域と共生して長期安定的に電力を供給するた め、①について、事業計画作成の初期段階から風力発電事業者からの一方的な説明だけ でなく、自治体や地域住民の意見を聴き適切なコミュニケーションを図るとともに、地 域住民に十分配慮して事業を実施し、誠実に対応することが必要である。
 ②について、配慮すべき地域住民の範囲、説明会の開催の要否などの具体的なコミュ ニケーションの方法については、計画初期段階から積極的に自治体と相談して、検討す ることが有益である。また、地域住民に対して、どのような事業者が事業を行うかをよ く理解してもらうためには説明会の開催が効果的である。特に大規模発電設備を設置す る場合、土地の開発を伴う場合、近隣住民の生活環境への影響が過大になる場合には、 地域とのコミュニケーションを密に図ることが求められる。
 また、法律や条例等に基づく環境アセスメント手続において、説明会や環境影響評価図 書に対する意見聴取等が定められており、これらを適切に実施することも、地域住民の理 解の促進に資する。法律や条例等に基づく環境アセスメント手続が必要ない場合であっ ても、自治体や地域住民の理解を深めるため、積極的にコミュニケーションを図ることが 求められる。 
 また、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に 関する法律(平成 25 年法律第 81 号)では、市町村の基本計画に則り、地域住民との合意 形成の下、地域への利益の還元を伴う事業を行うことで、一部の関係法令の手続の円滑化 が図られる仕組みとなっており、地域住民の理解促進の参考にされたい。(「第2章 適切な事業実施のために必要な措置」を引用)

 以上のように、住民との合意形成の大切さの部分を抜粋しましたが、ここが地域住民としての最後の砦となる部分です。

 しかし事業者は形式に沿って数回説明会を開催すれば、「しっかりとコミュニケーションを取った」と主張して、あっという間に進められてしまう恐れがあるので、合意していないならばしていないことを表にアピールしていかなければなりません。


 その他ガイドラインの中には 、土地及び周辺環境の調査・土地の選定・関係手続について、設計・施行について、運用・管理について、撤去及び処分についてなどが示されています。




環境アセスメント(環境影響評価法)

 1997年に「環境影響評価法」が制定され、特に大規模開発事業等による環境への影響を事前に調査することによって予測、評価を行う「環境アセスメント」の手続きが行われるようになりました。

 環境アセスは第三者が行うのではなく、事業者自らが行うのです。

 開発事業による重大な環境影響を防止するためには、事業の内容を決めるに当たって、事業の必要性や採算性だけでなく、環境の保全についてもあらかじめよく考えていくことが重要となります。 このような考え方から生まれたのが、環境アセスメント(環境影響評価)制度です。
 環境アセスメントとは、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査、予測、評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうという制度です。(資源エネルギー庁HPより引用)

 環境アセスにおける問題点を、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也(いいだてつなり)氏はこのように述べています。

 メガソーラーによる大規模自然破壊や風力発電の開発にあたって、日本の政策が従来から抱えてきた問題が、さらに事態を悪化させる側面もある。たとえば、環境アセスメントに戦略的アセスメント(事業の計画段階で調査・予測するもの)が欠けており、いったんプロセスに入った事業は止められず住民参加の機会もない。
 社会全体の土地利用計画が実態としてなく、社会規制も極めて緩いうえに、政策・制度面でも、全般に環境保全よりも経済開発が上位に置かれているのが現在の状況だ。(「再生可能エネルギー社会への課題と自然保護」より引用)

 そう、「止められず住民参加の機会もない」という、まさにここが問題なのです。

 しっかりと環境アセスメントをすれば、そこが適地ではないことがわかり、建設を止めることができるのではないかという淡い期待を抱いている人も多いのではないでしょうか。

 しかし、どれだけ成熟していない計画であろうとも事業を止める手段はなく、アセスメント過程でのさまざまな方面からの意見書にも「善処しました」と多少の寄り添った姿勢を見せれば、許認可はどうにでもこうにでもなります。


 つまり、全ての背景となる「環境保全よりも経済開発が上位に置かれているという現状」とどう戦っていくのかということが、地域住民にとっての大きな課題です!




許認可権

 風力発電施設を建設するためには様々な法律や条例に照らし合わせた許認可を得る必要があります。

 主な許認可を以下の「CEF」のHPより引用致します。

【立地調査に関わる許認可・申請】 
 風車を建設する予定地は、農地、公園、山など様々な場合があります。それらの土地を風力発電事業として活用するためには、主に以下の法律・条例などに照らし合わせて許認可を得る必要があります。 
【実施設計に関わる許認可・申請】 
 発電事業では大容量の電力を扱うため、実施設計の際には、電気に係る許認可・申請もまた欠かせないものです。実施設計の際に特に必要となる法令等は以下のものが挙げられます。
【建設工事に関わる許認可・申請】 
 建設工事に関わる許認可は「風車が建築物として安全であるか」「既存の設備の電波の妨害をしないか」「騒音、振動は基準値以下であるか」などなど、工事段階とその後の運営段階における風力発電事業の安全性を確認することが中心になっています。 具体的な法令等は以下のものが挙げられます。

 このように国の各省庁及び都道府県知事の権限に加え、市町村にも多少の許認可権があるようです。

 といっても、市町村の窓口は(県もそうですが)、担当職員が専門家ではないので、コンサルの作成したアセス書類に「影響は軽微、環境保全については実現可能な範囲で対応する」と記された紋切り型の言葉をみて、安心してアセス委員会に責任を押し付ける形で「GOサイン」を出すのです。 

 もしそういうアセスの手続きや評価を無視して、県や市の担当が許可出すなら、その担当部署の管理職が責任とらないといけないので、そんな恐ろしいことは普通の公務員には出来ないのです。

 つまり「市町村の許認可はあるにはあるが、ないに等しい」という表現が正しいと思われます。

 意見書の件もそうですが、市町村には環境の専門家がいないため、「なされるがまま」ということになりかねないということも問題点として挙げておく必要があります。
 

 それに加えて、普通ならばなかなか許認可を得ることが難しいようなアセスの項目も、風力発電ではハードルが下がっているということですし、やはり許認可権を盾にして止まることを当てにするのは無駄でしょう。


 それでも地元発の反対運動が市町村を越えて都道府県まで届いたならば、知事も同調してくれると信じています。

 どうすれば区から市町村、市町村から県、そして国まで住民の声が届くのかを考えなければなりません。




愛知目標

 「愛知目標」とは、2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)で採択された、「生物多様性を保全するための戦略計画2011-2020」の中核をなす世界目標です。この会議で、2020年までに生物多様性の損失を食い止めるための緊急かつ効果的な行動をとることが合意されました。そのために各国に求められる行動が20にまとめられ、愛知目標(愛知ターゲット)と名づけられました。

 愛知目標3では、2020年までに生物多様性に有害な補助金を廃止することが記されています。

 遅くとも2020年までに、条約その他の国際的義務に整合し調和するかたちで、国内の社会経済状況を考慮しつつ、負の影響を最小化又は回避するために、補助金を含む生物多様性に有害な奨励措置が廃止され、あるいは段階的に廃止され、又は改革され、また、生物多様性の保全及び持続可能な利用のための正の奨励措置が策定され、適用される。(環境省HP「愛知目標」より引用)

 風力発電では絶滅危惧種の猛禽類やオオサンショウウオの住む山間部での開発が進められています。野鳥の会や動物保護グループなどの協力を得て、その存在が確認されたならば、愛知目標を主張し、補助金の廃止を求めることもできるはずです。




風力発電推進市町村全国協議会

 まず自分の住む自治体が風力発電推進であるかどうか知っておくことも大切です。風力発電推進市町村全国協議会というものが組織され、活動しています。

【加盟市町村(平成26年7月時点43市町村が加盟)】
 北海道稚内市、北海道苫前町、北海道寿都町、北海道えりも町、北海道せたな町、北海道島牧村、北海道浜中町、北海道江差町、青森県外ヶ浜町、青森県風間浦村、青森県深浦町、青森県六ヶ所村、青森県東通村、青森県横浜町、岩手県葛巻町、岩手県二戸市、岩手県釜石市、山形県庄内町、福島県天栄村、福島県郡山市、新潟県柏崎市、富山県朝日町、富山県富山市、富山県入善町、石川県内灘町、茨城県常陸太田市、静岡県掛川市、静岡県東伊豆町、愛知県田原市、奈良県野迫川村、和歌山県有田川町、兵庫県洲本市、鳥取県北栄町、鳥取県大山町、鳥取県湯梨浜町、愛媛県伊方町、高知県梼原町、高知県大月町、長崎県壱岐市、長崎県平戸市、長崎県五島市、熊本県産山村、鹿児島県南九州市、鹿児島県中種子町 (北海道苫前町のHP「風力発電推進市町村全国協議会」より引用)

 ちなみに加盟市町村は年々減っているようです。ちなみに以下は平成17年時点の加盟市町村の資料があり70市町村が加盟していますので大幅な減少です。

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www.re-policy.jp

 推進市町村の場合は、再エネの良い面ばかりがクローズアップされやすいので、しっかりとした事業結果の検証が必要となってくるでしょう。




ライフサイクル

 風力発電では一面のみが切り取られ美化されますが、ライフサイクル全体で物事を見る必要があります。ライフサイクルとは、生じてから消えるまでの全過程のことです。

 資源採掘 → 精錬 → 製造(風車部品・蓄電池など)→ 輸送 → 準備工事(伐採) → 道路工事 → 用地造成 →基礎工事 → 部品搬入 → 据付工事 → 運用(保守・修繕)→ 撤去 → 廃棄 → リサイクル

 風力発電の場合は、ザっとこのような感じでしょうか。

 我々の想像できる部分はせいぜい「準備工事から撤去まで」になりますが、資源採掘、製錬、製造そして撤去、廃棄という部分を知ると、再エネの知られざる裏側が見えてくるのです。

 表向きのクリーンなイメージを損なう事実も浮かび上がってきています。

 一部ではなく全体を見つつ、それでも託せるのか、それならば託せないのか、地元住民が決めていかなければなりません。




騒音・低周波音

 音は、「高さ」「強さ」「音色」の3つの要素で決まります。

 「高さ」については、この波 の長さに相当する「波長」の長さによって決まるも のであり、数値として示す際には、1秒間に何回分 の波が振動するかという、周波数(単位は「Hz」(ヘ ルツ))として表される。この周波数が大きい音ほど 高い音になる。
 通常、人が聞こえる周波数は、概ね 20~20,000Hz と言われているが、我が国では約 100Hz 以下の音 を低周波音と呼んでいる。また、そのうち約 20Hz 以下の音は人の耳では特に聞こえにくいが、物の振 動を引き起こし得る音であり、超低周波音と呼ばれ ている。
人が聞くことができ る最小の可聴音となる音圧は、0.00002Pa とされて いる。 音の「強さ」は、この「音圧」の 2 乗に比例する 性質がある。このため、音の「強さ」を表す際に、 最小の可聴音となる音圧(0.00002Pa)の何倍に相 当するかを計算し、更に 2 乗した数値を対数変換し た上で 10 倍した数値に換算する方法で表すことに より、最小の可聴音から、ジェットエンジン付近の音までの音の強さを 0~120 程度の範囲で分かりやすく示すことができる。この方法により表される音の強さのことを「音圧レベル」と呼び、単位は「dB」 (デシベル)により表される。(「騒音・低周波音について」 公害等調整委員会事務局 「第 1 回:音に関する基礎知識」より引用)

 風力発電では騒音、つまり風車から出る低周波音、超低周波音による健康被害が問題となっています。

 環境省が「低周波音の中でも20Hz以下の超低周波音に関しては健康被害は明らかな知見は確認できなかった」という見解を示したことで、事業者もその認識で事業に取り組んできます。

風力発電施設は、静穏な地域に設置されることが多いため、そこから発生する騒音等の レベルは比較的低くても、周辺地域に聞こえやすいことがある。また、風力発電施設から は、ブレード(翼)の回転によって振幅変調音(スウィッシュ音)が、また、一部の施設 では内部の増速機や冷却装置等から純音性成分が発生することがあり、これらの音により わずらわしさ(アノイアンス)を増加させ、睡眠への影響のリスクを増加させる可能性が あることが示唆されている。一方で、風力発電施設から発生する 20Hz 以下の超低周波音 については、人間の知覚閾値を下回ること、他の騒音源と比べても低周波数領域の卓越は 見られず、健康影響との明らかな関連を示す知見は確認されなかった。(環境省「風力発電施設から発生する騒音に関する指針)より引用

 超低周波音の取り扱いで、事業する側と住民側の認識に差が出てきています。

 日本で風力発電の低周波音問題がクローズアップされたのは、2007年のことです。愛知県で風力発電トラブルが発生した際です。同年1月に、愛知県豊田市と田原市には各1基の風力発電機が運転を開始。その後、田原市で2名、豊田市で26名が健康の不調を訴え、行政が乗り出す事態となりました。
 一般的に、低周波音の調査では、調査員が現地の低周波音を実際に耳で確認したり、測定器を使って低周波音の音域や音の強さ(デシベル)を計測します。法的紛争にまで発展した田原市と豊田市では、環境省も腰を上げて実測を行いましたが、結果はシロ。人体に悪影響を与える種類の低周波音は発生していないという結論となりました。
 しかし、これで問題が解決したわけではありません。それは、低周波音の種類と人体への影響については万人が納得する基準が未だ見出されておらず、科学者の間でも見解が一致していないためです。特に、環境省の調査報告で、20Hz以下の低周波音は観測されるが、20Hz以下の超低周波音は耳が感知できる音域ではないため健康被害はない(これを「感覚閾値論-かんかくいきちろん」と言う)としたことに対して、耳が感知できないものでも人体に悪影響を及ぼしうるとする反論が登場しています。 
 さらに紛争の収拾を難しくするのが、風力発電と低周波音の因果関係の立証です。そもそも低周波音は空気の振動であって、その空気の振動が何によってもたらされているかという因果関係は極めて計測が難しいものです。事件の現場にも、人間社会や自然環境から空気に対する影響はたくさんあり、低周波音があったからといって、それを風力発電機が原因となっていると特定することは難しいのです。
 健康被害を訴える方からすると、風力発電事業者が責任逃れを主張しているようにも聞こえますし、風力発電事業者からすると言い掛かりのような気持ちも芽生え、双方の気持ちのすれ違いが発生してしまいます。 (Sustainable JapanのHPより引用)

 世界各地で健康に関する被害報告があるということも事実であり、それに対して「思い込み」「言いがかり」「障害者」などという誹謗中傷も含む、被害者を攻撃の対象にすることも闇の部分です。

 実際に環境省の疫学調査における長島町の風力発電の調査では睡眠障害が多数見られますが、超低周波の知見を認めないと結論づけるならば、これほどの睡眠障害者が風力発電施設と関係なく存在するということは、もっともっと健康問題の根は深いのではないでしょうか。

 



電力調整とバックアップ

 一日の電力使用量は夏場の場合、夜は少なく、朝からお昼にかけてぐ~っと上昇し、お昼下がりに一番使われ、またそこから夜にかけてゆっくりと下がっていきます。

 冬場の場合は夕方に一番多く使われるようです。

 以下の四国電力HP掲載の図のように、一日の使用量は推移しています。


 その使用電力量に従って、同じ量だけ発電しないといけません。これを「同時同量の原則」といいます。 そのバランスが崩れると電気が不安定になったり、ひどい場合は停電が発生してしまいます。

 風任せな風力発電、天気状況に左右される太陽光発電の再エネ電源は不安定であり、調整力に優れた火力発電のバックアップが必要となります。

 再エネ導入で火力発電を減らしていけたらというイメージが多くの方にあるかもしれませんが、残念ながら再エネにとって火力発電は不可欠であり、再エネのために火力発電の建設を促すということにもなります。

 つまり現在の再エネ反対派の言い分とすれば、再エネで大切な地元の環境が破壊されるのに、火力発電所を減らせるわけでもなく、CO2排出量も変わらないってどういうことだ!という怒りがあるわけです。

 以下の資源エネルギー庁のHPに書かれている文章でも「相殺」ということになっているので、フェイクニュースを論拠にしているわけではありません。

 第一に、変動再エネには、気象条件等で発電しない際の調整電源が必要となり、現状多くは火力発電でそれをまかなっています。したがって、デンマーク、ドイツなど変動再エネ比率が高い国では、調整電源としての火力発電比率も相対的に高くなっています。この傾向は米国各州でも同様です。
 少なくともドイツでは2010年と2015年を比較すると、CO2排出量はほぼ横ばいです。その要因としては、再エネ増加によるCO2削減効果と、原子力の稼働減、石炭火力発電の稼働増、電力需要増によるCO2排出増加効果が相殺しあう関係となっていることが考えられます。
(資源エネルギー庁HPの「第2節2050年に向けたエネルギー情勢の変化と課題」の「2.2050年視点で踏まえるべき論点、課題」の「(2)地球温暖化対策の変化・潮流」の「② ゼロエミ電源について」より引用)




送電線空き容量と再エネの出力制御

 「送電線の空き容量がなく、再エネが繋げない」という電力系統への連系の課題もあります。

 ドイツのように再エネ優先接続ではなく、再エネであろうが火力であろうが電源主を問わない「先着優先が原則となっています。ドイツは他国と送電線を繋いでいるため余剰電力を他国に流すことが可能ですが、日本では難しいようです。

 それ故に九州ではすでに再エネの出力制御が2018年に26回、2019年度に74回と実施され、また北海道、東北といった送電線の上限に近い地域では、2019年7月の時点で事業者に通知すると発表がありました。

 これ以上再エネが増えたら、ますます電気を捨てるだけの「ムダ発電」が増えて問題だという意見や、一時的に電気を捨てても再エネの電力量を増やすことが最終的には地球にとっての得になるという意見があります。

 いずれにしても急激に再エネ施設を増加させることは現在必要ないのではないでしょうか。





再エネ先進国ドイツ

 なにかと再エネのモデルにされているのがドイツです。推進派の人々にとっては「聖地」ともいうべき国です。

 2019年の電源構成では、再エネの比率が46%をも占めるようになりました。

 しかし、それで順調にCO2削減に成功しているかというと、そうでもないような論考も多く発表されています。

 もちろん推進派からすると嘘八百という風に否定するわけですが、本当にそうでしょうか。

「不安定電源だし、電気代はどんどん上がるし、CO2も減らない」という結論付けしたものも含めて、問題は山積しているように思われます。

 ヨーロッパは送電線で電力の輸出入を行い電力量の調整を行なっているため、一国だけの電源構成で見ることに意味はなく、EU全体で見ることが必要のようです。 

 過去にも指摘された問題のようですが、ドイツで再エネが増えて、他国で火力や原子力が増えたりすることを、「グリーンパラドックス」(緑の矛盾)というようです。


  以下の「ドイツの再生可能エネルギー拡大を支える他国の原子力 2019年12月24日」や「ドイツ、政府諮問委員会が再エネ法はCO2削減にも技術革新にも役立たないと報告 2014年3月12日」の情報も参考に挙げておきます。

 このような面もあるということなので、決して一方だけでは語られてはなりません。


 また陸上風力の建設は2018年以降一気に減少しています。

 陸上風力発電装置の新規設置台数が減っている最大の理由は、北部を中心に陸上風力発電装置の建設に対する住民の反対運動が強まっていることだ。ローターの回転音が気になる、プロペラがさえぎる太陽光がストロボのようだ、といった苦情が住民から出ている。  
 さらに訴訟も相次いでおり、2019年の第2四半期の時点で325基の風力発電が対象になっている。 こうしたことから、メルケル政権が2019年9月に発表した「2030年気候保護プログラム」では、風力発電と住宅地との間に最低1kmとらなくてはいけない、という内容が含まれている。また、それより以前となる2014年から、バイエルン州では民家との間で風力発電のプロペラの高さの10倍の距離をとらなくてはいけない、という「10H規定」があった。(エネルギーシフトHP「ドイツ・エネルギーシフトの柱、風力発電の危機とは」より引用)
ドイツはFIT制度からFIP制度に大きく転換し、さらにほとんどで入札を取り入れている。この制度転換が陸上風力の激減の大きな原因のひとつというのが衆目の一致するところであり、これに風力発電の適地不足や認可の問題が拍車をかけている。(SOLAR JOURNAL「順風満帆ではない“再エネ先進国”ドイツの苦境(後編)」より引用)

このように現在ではドイツでも風力発電への逆風が吹いているようです。

 また、「風力発電と住宅の距離は最低1km」という基準は参考値として頭に置いておく必要があります。


それでもドイツ推しの人と議論するためには、ドイツと日本の地理的条件の違いも考慮に入れておくといいでしょう。

<見逃されやすいドイツと日本の地理的条件の違い> 
 ドイツに長く住んでいて、日本からのお客さんにドイツの再エネの素晴らしい進展状況を見せると、なぜ日本は少ないのだろうかとよく聞かれる。筆者の見るところ、地理的な条件の違いが意外と見逃されているように思われる。簡単な数字だが、日本における平地面積は国の27%、ドイツは76%である。つまり、太陽光発電や風力発電用に転用できる面積がドイツでは圧倒的に広い。
 日本からの友人を乗せて北ドイツを案内したことがあるが、アウトバーンを走りながら、見渡す限りの平地に数百本もの風車が林立しているのをみて、彼は「日本ではあり得ない」と絶句していた。日本では平地があれば、人が住んでいるか、工業地帯か、耕作地である。山岳地帯に再エネの発電施設を作る場合には、コストとして跳ね返ってくる。それと将来期待されている洋上風力発電だが、ドイツの海は北海もバルト海も遠浅で数十キロ沖合でも数十メートルの深さに過ぎないから、急峻な地形の日本の海に比べて、風力用の鉄塔建設において技術的にも費用の面でも大きな違いが出てくる。バイオマスにおいても、建設費用(一億円以上)はドイツの中規模の農家(平均耕作地60ヘクタール)が十分出資できる範囲である。
(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟HP「ドイツの電力事情を理解するには ーEU内におけるドイツの電力事情―」より引用)


 また「再エネ100%は幻想ではない」とドイツ信者の方々は再エネ比率の高まったドイツに続けとばかりに他の電源を即刻排除するように迫りますが、ドイツの調整できる安定電源の切り札が「ノルドストリーム」という、ロシアのレニングラード州ヴィボルグからバルト海の海底を通りドイツのグライフスヴァルトを結ぶ全長1,224kmの「天然ガスパイプライン」です。

 さらに2020年9月現在、ロシアのルヴァ湾からやはりドイツのグライスヴァルトへ通じる「ノルドストリーム2」の建設工事の大部分が完了して供給開始間近であるということで、やはり現時点では安定電源をドイツでさえ必要としていることを知っておく必要もあるでしょう。

 ノルドストリーム2はバルト海を通って独ロを結ぶ全長約1200キロのパイプライン計画で、既に大部分の工事が完了している。石炭や原子力に代わる安定したエネルギーを得たいドイツと、ウクライナなどを通さずに欧州にガスを売りたいロシアの思惑が一致して建設が進んできた。(日本経済新聞2020.9.7より引用)






【今後学ぶ必要があるキーワード】

FIPと柔軟性

 2020年にFITの制度は終わり、新たなステージへ進むこととなります。

 FIT制度について一生懸命学んできた人は、今度はFIP制度(フィードインプレミアム)という、電力販売時の市場価格に「割増金(プレミアム)」を上乗せする方式を学び直さなければなりません。


 また、火力発電バックアップなどという一電源からのバックアップという考え方だけではなく、今後は「柔軟性」や「セクターカップリング」という考え方があるのだということも知っておくことは必要かもしれません。



カーボンリサイクル

 CO2を資源として捉え、これを分離・回収し、多様な炭素化合物として再利用するカーボンリサイクルについてです。

 未来にCO2が役に立つというのならば、前提から変わってきます。

そこについても検証が必要ですね。


さいごに


 再エネを悪にするつもりはありません。

しかし再エネは決して神格化されるものではないのです。


 再エネを導入することが目的になっていないでしょうか。

本当の目的は、CO2を削減し、地球環境を大切に守っていくことです。

一度再エネ神話から現実へと目覚め、エネルギー問題を考えていくことが必要です。


エネルギー比率よりも、エネルギーの総使用量を下げること。

再エネに投入する無駄な資金を、さらなる「省エネ」に投入する方がいいという意見もあります。





「風力発電問題」~真実はどこにある?

風力発電への期待は大きく、希望に溢れて見えます。 脱原発、さらには地球温暖化防止への脱炭素(脱火発)を正当理由に掲げ、その動きは加速しています。 地球に優しいクリーンなイメージも固定化しています。 しかし、風力発電の現実は、そうとも言い切れない部分があります。 なぜこれほど多くの反対が起きているのでしょう。 風力発電を悪にはしたくないですが、問題から目をそむけていてはならないはずです。

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